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人の絡みによって経済が動くシミュレーションボードゲーム「フードチェインマグネイト」レビューと感想

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フードチェインマグネイト
おすすめ度:★★★★☆
ルール難易度:★★☆☆☆
運要素:★☆☆☆☆
思考要素:★★★★★
プレイ時間:120~240
年齢:14歳~
プレイ人数:2~5人

ボードゲーム「フードチェインマグネイト」は、プレイヤー同士の絡みによって需要と供給が生み出され、そこから自分だけの利益を生み出すために行動するシミュレーションゲームになっています。

ルール概要

まず、プレイヤーは手持ちのカードからレストランで働かせる従業員を裏向きにプレイしていきます。従業員にはそれぞれ従業員を雇う、訓練してアップグレードする、値下げする、ハンバーガーを作るなどです。従業員はそれぞれに働くためのスロットを消費しますので、このスロットを増やすマネージャーなる従業員もいます。

全員が従業員を選び終わったらそれをオープンします。これで誰が何を行うのかがわかります。この時、従業員をまだ働かせられるスロットにあまりが多いプレイヤーから「行動順」を選択する権利が与えられて、行動順が決定されます。

その後、従業員ごとに設定されているアクションを実行していきます。

従業員のアクションにより、街にはそれぞれの品目について需要が発生し、家から住民が出歩きますので、それぞれの住民の欲しい物を売っていく、というのを繰り返していきます。

感想

初めて遊んだ時の感想は「これは本当にゲームなのか?」というものです。ルールは驚くほどシンプルで、多くはありますがシンプルな能力が設定されたカードによってプレイに深みがだされているタイプのゲームで有りながら、その道筋は無数にあり、そしてそれによってどこまで手は伸び、一手でも失敗すれば一気に最下位に転落してしまうほどのピーキーなバランス。

ルールの一つ一つが「だって、そういうルールって知ってるよね? 強いと思うんなら何で使わなかったの?」と私達に語りかけてくるよう。

プレイヤーは脱サラから勢いだけでレストランを始めたような状況で、自分以外に誰もいない状態。もちろん、ハンバーガーの作り方もわからなければ、店を作っただけでは誰もやってこない。そういった状況から、人を雇い、教育し、ハンバーガーを作り、宣伝し、誘致し、値下げ戦略によってライバル達を出し抜く・・・・というのを本当に一から、自分で行っていきます。一つ一つのゲーム内効果がカードに集約されており、だからこその抜群の絡みが生み出され、強烈な戦略戦が展開されます。

普通のゲームであれば、需要はレート、住民は一定の距離しか動かない、そもそもが初期の状態である程度お膳立てがされている、需要が切れてもある程度売れる、いくらかのお金を稼ぐ方法が提示されている、それぞれの要素には上限値が決められている。といった「ゲームを楽しく安定させる」メカニクスが整備されている筈です。しかし、本作では一切それがされていません。あたかも「だって、現実には上限なんてないじゃん」と言われているようです。

街の片隅でハンバーガーを作ってほそぼそと生活していたら、飛行機が飛んできて「ピザ始めました」とビラをばらまき初め、常連さんが突然「ハンバーガーとピザをください」と言ってきて「いや、けどうちはハンバーガー専門店で・・・」と断ると「あー、だよね。今日は両方一緒に食べたいんだよね」と街の反対側のファミレスへと車を走らせていってしまう。まさに現実。まさにシミュレーションであります。

その伏線は着々とつまれていた筈で、全ての情報は開示されており、飛行機宣伝のカードは前もってアップグレードで取得している人がきちんと行動が宣言されています。完全なるアブストラクトでありながら、強烈な絡み。見ていながらその警戒、準備をしていなかった本人が悪いわけです。一手間違うと次のターンから一切の収入がなくなることもザラ。そこからどれだけバックアップできるのか。それぞれのプレイヤーの意図が絡みあいながら相互影響する街で自分の利益を確保出来るのか。たかだかどのカードを取得し選択する、ただそれだけでここまでの絡みが生み出されるゲームシステムに脱帽します。

本作にはそれぞれのプレイヤーに特性を持たせるため、「実績」に近いゲームルールが採用されており、初めてハンバーガーを販売したら今後販売されるハンバーガーに+5ドルのボーナスがつく、最初に宣伝をしたらその労働者が永遠に宣伝をし続ける、などなど魅力的なボーナスがゲットできます。またそれによって、「それを知っている前提で戦略を組み立てる」事が最低条件になっていて、結果ゲームを本当に理解し、戦略的に動けるようになるまで一時間は少なくとも必要になってしまいます。

本作をボードゲームだと思うと大やけどする事でしょう。最初の数ターンでさえ適当に行動すると今後二時間以上続くであろうゲームを何もできないまま過ごす事さえあるでしょう。

それでも、なんとも言えない魅力に溢れるゲームであると感じます。どのゲームでも味わえない強烈な絡みは勿論、極端なルールの無さ、ストイックなそのゲーム性は独特の中毒性を持ちます。本作はだれにでもオススメできる作品ではありませんが、人読み、場読みによるどこまでも戦略的なゲームとなっています。実際、私は中々に面白いと感じます。

経済系、シミュレーション、現実に株運用などをしている方には面白く感じるのではないでしょうか。逆に、本作にゲーム的な楽しさを求める方は大きなショックを受けるかと思います。重ゲー好きと自負するなら一度は遊ぶべき作品になっているのではないかと思います。

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